発酵食品が私たち人間にもたらす利点は大きく分けて3つあります。
一つ目は、食品を発酵させることによって栄養素が増えるということです。たとえば、麹を使った発酵食品は、麹菌がビタミンB群を多く排出することから、ビタミンB群が豊富な食材へと変化します。これらの栄養素は、どの微生物が多い食品なのかによっても異なります。
二つ目は、食品を発酵させることによって微生物の酵素による分解が進み、食材が消化吸収のよい形へと変化するということです。たとえば、茹でた大豆を発酵させる ことによって、大豆のたんぱく質が分解され、味噌になります。茹でた大豆に比べ、味噌はとても消化吸収がよく、栄養価も豊富です。さらに、分解によって、うま味や甘味が生まれ、とても美味しい食材へと生まれ変わるのです。
三つ目は、食材が発酵しているということは、微生物がたくさん食材の中に存在しているということであり、これらの微生物が私たちの体にとてもいい影響を与えてくれているということです。たとえば、生きた微生物を食べることによって整腸作用があったり、たとえその微生物が生きていなくても免疫細胞を刺激したりと、私たちの体に与える影響は未知数です。さらには、微生物が繁殖していることによって、食材自体の保存性もUPします。これらの3つの利点が合わさり、発酵食品は、より栄養価が高く、より美味しく、より保存性が高く、より消化吸収のよいスーパーフードに生まれ変わる食品であると言うことができます。
日本の発酵食品の特徴は調味料の中に、発酵しているものが多いということです。醤油も味噌もみりんも酒も酢も発酵食品です。これらの発酵調味料を使って調理する ことで、調理をする食材のもともとの栄養素だけでなく発酵調味料の中に含まれる栄養素も加わり、あえて発酵食品と接収しようと意識することなく、自然と発酵による利点を体の中に取り入れることができます。
スポーツに特にお勧めの発酵食品は「甘酒」です。ここで言う甘酒とは、酒粕と砂糖をお湯に溶かして混ぜたものではなく、麹だけ(米やおかゆを入れる場合もある)で作った甘酒のことです。実は、この麹から作った甘酒は日本古来からの栄養ドリンクで、江戸時代には夏バテ防止のために飲まれていました。冬に飲むイメージがありますが、俳句では夏の季語です。ブドウ糖やビタミンが豊富で、現代では「飲む点滴」、またメラニン色素を抑制するコウジ酸を多く含むことから「飲む美容液」などと呼ばれて注目されています。
作り方は簡単で、麹と水をよく混ぜ62℃前後で4時間ほど保温します。この間に、麹の酵素が米のでんぷんを分解し、ブドウ糖へと変化させ、とても甘く栄養価の高い飲料に変化します。ご家庭で簡単に作るには、魔法瓶や炊飯器などがお手軽ですが、最近では甘酒やヨーグルトを作るための保温機も販売されています。
出来上がった甘酒は冷蔵庫で1週間ほど保存が可能です。飲みきれない場合は、1か月ほど冷凍保存も可能です。栄養価も高く、また90%以上がブドウ糖に変化しているため、即効性のあるエナジードリンクとしても活用できます。ただし、その分、血糖値も上がりやすいので、飲む量や飲み方、飲む時間帯には注意が必要です。そのまま飲む際の1回の量の目安は、おちょこ1杯程度です。
甘くてとても飲みやすいため、おやつ代わりに飲む方も多くいらっしゃいますが、飲み過ぎには注意しましょう。たんぱく質などの他の栄養素と一緒に取ることによって血糖値の急激な上昇を抑えます。砂糖がわりにヨーグルトに混ぜたり、酢や塩麹と共にミキサーにかけ、甘酒ドレッシングにしたり、その他塩麹と甘酒を1:1で混ぜて漬け床にしたりと、飲料以外の使い方も豊富です。おかし作りやパン作りなどで砂糖代わりに使うこともお勧めです。
消化吸収のよい良質なたんぱく質が多く、EPAやDHAなどの不飽和脂肪酸も多く含むため、血中のコレステロールを抑えて血液の流れをよくしてくれます。また、麹に含まれるビタミンB群が栄養素の代謝を促し、鮭に多く含まれるビタミンDがカルシウムの骨への吸収を進め、疲れにくい体を作ります。
じゃこにはカルシウムが豊富ですが、高菜漬けに含まれる乳酸によって、カルシウムの吸収率がさらにUPします。スポーツによる筋肉の収縮時に、カルシウムやカリウムは必要不可欠です。効率よくカルシウムを摂取し、骨を強くします。
豚肉にはビタミンB1が豊富ですが、豚肉を醤油麹と味噌に漬け込むことによって、さらにビタミンB1が増加し、糖質の代謝や神経の働きに関与するため、疲労回復やイライラ防止に役立ちます。